脂肪酸とは何か?


脂質、炭水化物、たんぱく質は多量栄養素である。脂肪酸は、一般的に脂肪又は油と言われている物の構成要素であり、脂質に属する。色々な呼び名があって混乱してしまいそうだが、実用上これらを区別する必要性はあまり無い。脂肪という言葉は、肥満を連想させるために悪いイメージがあるかもしれない。確かに、脂肪の摂り過ぎは肥満、そして生活習慣病という結果をもたらす。だが、それを恐れるが故に脂肪の摂取を過度に抑えることは、同様に不健康への道である。脂肪酸は人体にとって大切な栄養素であり、これを適度に摂取することが健康を維持するために必要な一条件である。

脂肪酸は、体内に入ると脂肪組織の中にエネルギー源として蓄えられる。又、人体の細胞膜、脳、各種ホルモンを構成する材料になるなど、極めて重要な働きを持っている。脂肪酸には幾つかの種類がある。摂取量が不足した場合に体内で合成されるものもあるが、なるべく様々な食品からバランス良く摂取するのが望ましい。脂肪酸の分類方法は幾つかあるが、下記の4種類を把握していると実用上役立つだろう。


飽和脂肪酸

パルミチン酸、ステアリン酸などは飽和脂肪酸に属する。この脂肪酸は、主に動物の脂肪に多く含まれている。バターは、油脂の約7割が飽和脂肪酸である。ラード(豚脂)や牛脂は、飽和脂肪酸とオレイン酸が共に4〜5割という構成になっている。植物では、熱帯地方原産の椰子[やし]油(ココナッツオイル)、パーム油に多い。概して、飽和脂肪酸は融点が高く、不飽和脂肪酸は融点が低い。このため、飽和脂肪酸を多く含む先に挙げたような油脂は、常温で半固体のものが多い。


単価不飽和脂肪酸(オメガ9脂肪酸)

このグループの代表格「オレイン酸」は、動植物問わず様々な生物に含まれている。オリーブオイルや菜種油は、オレイン酸を主成分としている。又、品種改良によってリノール酸に代えてオレイン酸の含有率を高めた植物もある。これらの植物から取れるハイオレイック油として、紅花油(サフラワーオイル)、ひまわり油(サンフラワーオイル)などが商品化されている。これらは、オレイン酸がリノール酸よりも傷みにくいことや、リノール酸の摂り過ぎが健康に良くないとする研究結果を受けて開発されたという。


多価不飽和脂肪酸(オメガ6脂肪酸)

この脂肪酸は、人を含め哺乳類の体内で合成できないため、食物から摂取する必要がある。そのため、オメガ6脂肪酸は必須脂肪酸と呼ばれている。しかしながら、オメガ6脂肪酸は、様々な植物中に存在しているため、食事によって自然と摂取される。極端な偏食をしない限り、この必須脂肪酸が不足する心配は無い。飽食の環境に於いては、返ってこれを摂り過ぎてしまう恐れがある。そしてオメガ6脂肪酸の過剰摂取は、次項のオメガ3脂肪酸の良い働きを妨げてしまう。オメガ6脂肪酸の大半はリノール酸である。大豆油、とうもろこし油(コーン油)などは、リノール酸を主成分としている。又、牛や羊の体内には共役リノール酸(CLA)という脂肪酸がある。CLAは抗癌作用を持つことが確認されている。


多価不飽和脂肪酸(オメガ3脂肪酸)

これも必須脂肪酸である。アルファリノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などがある。存在量は他の脂肪酸に比べて少なく、必要摂取量も他の脂肪酸に比べて少ない。オメガ3脂肪酸は、心臓病のリスク低減、知能向上、精神障害の緩和など、人体にとって様々な利点があり、油というよりも「薬」と思った方が良いかも知れない。しかし、オメガ3脂肪酸は含有生物が限られているため、栄養バランスの偏った食生活では容易にこれが不足してしまう。そのため、オメガ3脂肪酸は、何らかの摂取源を確保しておくべきである。有力候補として、先ず魚介類が挙げられる。特に、鯖[さば]、鰯[いわし]、秋刀魚[さんま]などの青魚にはオメガ3脂肪酸が豊富に含まれている。又、亜麻仁[あまに]油、荏胡麻[えごま]油、紫蘇[しそ]油などからも摂取することができる。


脂肪酸と健康

脂肪酸とは何か?
トランス脂肪酸
トランス脂肪の規制
トランス脂肪の回避法
オメガ3脂肪酸の摂取法

参考資料

Fatty acid (Wikipedia)
Know Your Fats (The Weston A. Price Foundation)

© 2007 島崎 崇
更新: 2013年4月14日